マーケティング施策は戦略的なプロセスによって生み出されます。正しいマーケティングプロセスを行うことで「自社の課題をクリア」にし「その課題を乗り越えるマーケティング施策」ができます。現在、新型コロナウイルスの影響でビジネスの在り方が変化しています。変化の時代だからこそ、BtoBをはじめとした企業はオンラインを活用したセールスなどマーケティングプロセスの見直しをしています。
本稿ではマーケティング初心者向けにマーケティングプロセスを紹介しています。本稿を読むことで「正しい戦略的なマーケティングプロセス」や「その目的と方法」、「マーケティングプロセスの成功事例」を学べます。これらによってマーケティングプロセスの構築や、これまでのワークフローの見直し・刷新が出来るでしょう。
Contents
マーケティングプロセスとは?
マーケティングプロセスとは「自社の目標をクリアにし、それを達成するための戦略的な一連のプロセス」を指します。具体的には市場を分析し、ターゲットとなる顧客を獲得するまでの流れを設計します。全体的な流れは次の画像の通りです。

マーケティングプロセスは大きく、環境分析と基本戦略設計、戦略の実行評価の3つのステップに分類できます。各フェーズの目的は次の通りです。
- 環境分析:市場を理解し自社事業が参入・成長する機会を発見する
- 基本戦略設計:ターゲットとする顧客を明確化し、具体的なマーケティング戦略を立案する
- 戦略の実行評価:自社の目標と実際の成績を比較し、どのような改善が必要か検討し再実行する
以上のマーケティングプロセスを通じて、ビジネスが成功するように戦略を考え実行します。マーケティングプロセスは大きな視点の環境分析から行い、自社のマーケティング戦略に落とし込ことに意味があります。マーケティングプロセスを活用することで、市場に対して正しく堅実なマーケティング戦略が遂行できるのです。
環境分析
マーケティングプロセスにおける市場分析は「自社事業の参入・成長の機会を発見する」役割を持っています。代表的なフレームワークはPEST分析、3C分析、SWOT分析です。これらのフレームワークを活用することで、自社がすべきビジネスを洗い出すことが可能です。
PEST分析や3C分析、SWOT分析をすると重複しているように思える部分がでてきますが、安易に飛ばさず行うことをおすすめします。なぜなら各フレームワークにはそれぞれの長所や短所があります。様々視点から市場を分析することで、より解像度高く理解出来るのです。
市場を分析し、効果的な意思決定をサポートするための科学的な調査・分析に「マーケティングリサーチ」というものがあります。気になる方は下記記事もオススメです。


PEST分析
PEST分析は政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、テクノロジー(Technology)の頭文字をとって名付けられました。PEST分析の活用することで、マクロ的な視点から市場環境を把握できます。
政治
- 税制や法律などはビジネスに影響はないか?
- 協力企業や顧客がいる国の政治は安定しているか?
- どのような法律や規制がユーザーに影響を与えているか? など
経済
- 経済の景気や成長は事業にどの程度影響するか?
- 株式市場や資金調達市場は事業に影響を与えるか?
- 金利や為替、税金などは事業にどのような影響を与えるか? など
社会
- ユーザーの年齢や性別などは何か?
- 人口の増減はどの程度、事業に影響するか?
- ユーザーのライフスタイルの変化は購買行動に影響するか? など
テクノロジー
- 特許やライセンスは事業に影響するか?
- どのようなイノベーションが事業に影響するか?
- テクノロジーの活用でコストの削減や収益の向上は出来るか? など
3C分析
3C分析は顧客(Customer)競合(Competitor)自社(Company)を指します。市場を形成する主な3つの要素を分析することで自社が置かれている市場を理解することはもちろん、自社がすべき事業の概要を掴むことが可能です。
顧客
- あなたの顧客は誰か?
- 売上の構成や傾向は?
- 顧客数はどの程度伸びているか?
- 顧客が購入するまでのプロセスは?
- 顧客がなぜあなたのプロダクトを求めるのか? など
競合
- 競合は誰か?
- 競合の市場シェアは?
- 競合の強みと弱みは?
- 市場は競合をどのように位置付けてるか? など
自社
- 売上は?
- 目標との差は?
- 文化は?
- パフォーマンスは?
- 強みと弱みは? など
SWOT分析
SWOT分析では機会(Opportunity)脅威(Threat)強み(Strength)弱み(Weakness)を分析します。また機会と脅威は「自社ではコントロールできない外的要因」を指し、強みと弱みは「自社内の内的要因」を指します。SWOT分析を活用することで自社の弱みを強みで打ち消す施策を検討できるのです。
機会
- 未開拓の市場はあるか?
- 市場にトレンドがあるか?
- 市場規模はどれくれいか?
- 市場はどの程度成長しているか?
- 市場参入・成長する可能性はあるか? など
脅威
- 懸念する問題はあるか?
- 自社が参入する時の障害は?
- 競合は新規参入に排他的か?
- 規制などが行われる可能性は?
- 協力企業や顧客の交渉力は強いか? など
強み
- 得意な業務は?
- 競争優位性は?
- 活かせる組織文化は?
- 競合企業より優れている点は?
- バリューチェーン内でコントロールできるものは? など
弱み
- 不足しているリソースは?
- 能力発揮を障害するものは?
- 認知度やブランドはあるか?
- 価値を生み出すまでのコスト構造は?
- 限られたリソースの中で成功に必要なものは? など
セグメンテーション(市場細分化)
市場の分析から市場参入・成長の機会を特定できたら、STP分析を通じてどのような顧客をターゲットとするかを分析します。STP分析とはセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順に行うマーケティングプロセスを指します。
まず、セグメンテーションは「どの機会に優先的にアプローチしていくかを決める」役割を持っています。分類の方法は自由ですが、主に年齢や住んでいる地域、ライフスタイルなどによって行うことが多いです。
細分化された市場の規模や成長性を理解します。これらに優先順位を付けることで、マーケティング戦略がより具体的になり戦略の精度が上がります。
ターゲティング
アプローチする市場が決定できたら「自社が理想とする顧客像を見つけ出すターゲティング」をします。このプロセスで顧客な詳細なプロフィールを記載したペルソナを作る企業が多いです。なぜなら市場には多種多様な人がいるからです。ターゲティングを通じ、顧客の解像度を上げることで自社に最も適した施策を実行できるようになります。
これまでのプロセスで得た分析結果では、顧客を明確化できない場合があります。その場合はインタビューなどのリサーチを追加で行い、顧客についてより深く知る必要があります。顧客理解を深めることで、自社の価値がより効果的に顧客に伝わるマーケティング戦略を考えられるのです。
ポジショニング
ターゲティングにより自社がターゲットとする明確な顧客像を理解したら「顧客にどのように魅力的であるかを認識させるための活動であるポジショニング」を行います。顧客は競合企業と比較して購入するプロダクトを選定します。そのため自社のプロダクトが競合と比較して「何が違うのか」「どの点が優れているか」と言った差別化をする必要があります。
成熟した市場ではプロダクトが溢れているため、ポジショニングの役割は重要です。顧客が「私はこれを求めていた」「この商品が欲しい」と思わせる差別化をし、マーケティング戦略に活かしましょう。
マーケティングミックス
競合企業との差別化が終えたら「顧客にアプローチする方法を決定するマーケティングミックス」を選択します。マーケティングミックスはプロダクトの価値を高める組み合わせです。またマーケティングミックスは4Pと4Cをベースに立案するのが一般的です。
4Pは製品戦略(Product)価格戦略(Price)流通戦略(Place)販促戦略(Promotion)を指し、4Cは顧客価値(Customer value)顧客にとってのコスト(Cost)利便性(Convienece)コミュニケーション(Communication)を指します。
両者の違いは視点にあります。4Pは企業目線であり、4Cは顧客目線です。これら両方のフレームワークを活用することで、主観的にならず顧客が本当に求めるものを提供するマーケティング戦略を立案することが可能です。

マーケティングの戦略はアイデアを出すことで満足してはいけません。多くの場合、1回の戦略立案・実行だけではビジネスは成功しないからです。そのためマーケティング施策を実行した後のために測定可能な目標とマイルストーンを設定する必要があります。設定する目標はSMARTであることがポイントです。
- 具体的に(Specific):何を達成したいのか?
- 測定可能な(Measurable):どのように進捗を測定するか?
- 達成可能な(Achievable):その目標は達成できるか?
- 経営目標に関連した(Relevant):自社のミッションに関連しているか?
- 時間制限がある(Time-Bound):目標を達成する期限はいつか?
目標設定を終えたらそれらを達成するために必要なコストを洗い出します。必要に応じて予算の規模や、実施するマーケティング施策を調整しマーケティング戦略を実行します。
4P分析の詳細については、下記記事をご覧ください。


実行と評価
具体的なマーケティング戦略が立案したのち、それを実行します。実行の段階で資金の用意や人員の配置、毎月のベンチマークやアクションプランを準備しておくと評価がしやすくなります。
定期的にマーケティング戦略を実行した結果を基に、戦略を改善していき自社事業の成功を目指します。これにより自社の収益や成長性、顧客満足度などの進捗を測れます。また競合他社の動きも注視する必要があります。大々的な値引きキャンペーンや新商品の発表など、自社のビジネスに影響がある場合は戦略を修正しましょう。
マーケティングプロセスの重要性
ビジネスは顧客と自社を満足させる必要があります。戦略的なマーケティングプロセスを経ることで、これら両方の理解を行い具体的なマーケティング戦略を実行できます。特にマーケティング戦略において以下のポイントの理解は欠かせません。
- 自社のターゲット顧客を絞る
- 自社プロダクトの提供価値を知る
- 自社が対象とする顧客の理解を深める
またマーケティング戦略の計画や目標があることで、ビジネスの方向性が明確になることや、予算の浪費が防げます。これにより組織内全員が同じ目標に向かって働けます。それに加え、戦略の結果に応じてマーケティング戦略を修正していくことで、戦略を進化させることも可能です。具体的には顧客ニーズをより満たすための人員の再配置や、お試し価格といった販売促進などができます。
以上のように自社の市場の機会を発見し、それを獲得するための地に足ついた戦略を立案でき、「顧客により求められるには」を考えられる点で、マーケティングプロセスは重要なのです。
マーケティングプロセスで成功した企業の事例
マーケティングプロセスはビジネスの成功に欠かせないフローです。自社の課題を発見でき、またその課題を乗り越える方法も見つけられます。そのためには「顧客の理解」と「成功するためにはどうしたら良いか」に対して愚直に向き合う必要があります。
【資生堂】シーブリーズ
女子高生がよく利用する「シーブリーズ」というボディケア製品があります。2000年までは男性のユーザーがほとんどでした。しかし海に行く人が少なくなったことでシーブリーズの売上が下がり、この製品を提供する資生堂は事業の存続を問われました。
資生堂はマーケティングプロセスを見直します。そこでシーブリーズが提供する価値は海に行く男性だけでなく、女子高生にも効果があることを発見します。ターゲットの変更と合わせてマーケティング戦略を変更し、低迷期の8倍の売上を記録しました。
【マクドナルド】2014年の不祥事からの回復
国内3,000店舗以上あるマクドナルドですが、2014年に賞味期限切れの鶏肉が使用されていたニュースをきっかけに、多くのユーザーを失った事件があります。事実2014-2015年に567億円の損失を抱えてしまったのです。
マクドナルドはこの事件をきっかけに「利用しなくなったユーザーをどう取り戻すか」を考え、マーケティング戦略を練り直します。始めに対象のユーザーにインタビューを行い「顧客が本当に求めるマクドナルド像」の理解に努めたのです。
ユーザーインタビューの結果、マクドナルドはポジショニングを変更します。事件以前は「おいしい・安い・早い」でしたが、「出来たてで美味しい・価値に対してお得感がある・便利で楽しくて笑顔になれる空間」を目指したのです。具体的には以下の施策を実施しています。
- 裏メニューの提供
- お手頃マックの提供
- ポケモンGOが利用できる
顧客インサイトを軸にメニューの開発や店舗の改装などを実施した結果、2年で250億円の営業利益を獲得することに成功しています。
まとめ
本稿では「マーケティングプロセス」について解説してきました。マーケティングは企業経営に不可欠です。またマーケティングには戦略的なマーケティングプロセスが必要です。各プロセスの手順や目的、重要性を理解することで精度の高いマーケティング施策を実行することができます。また戦略は実行してからが勝負です。戦略実行の結果を基にマーケティングプロセスを繰り返し、修正・改善していくことでビジネスの成功に近づけるでしょう。